若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
カレンは病弱で、家の跡取りとしては兄がいたため、幼い頃にはさほど教育はうけていなかった。
アーネスト伯爵家の娘として指導する前に、無事に育つよう守る必要があったのだ。
カレンも大変な思いをしたが、彼女の3つ上のジョンズワートも、カレンとはまた違った方向に苦労をしていた。
ジョンズワートは名門公爵家の次期当主で、健康な男児だった。
加えて元より優秀で吸収も早く、真面目な性格だったものだから、親族や教師の期待もあり、デュライト公爵邸では日々厳しい教育を受けていた。
ジョンズワートがカレンにそのことを話すタイミングはほとんどなかったが、カレンだって伯爵家のご令嬢。
公爵家の彼が時間を持て余しているわけがないと、わかっていた。
それでもジョンズワートは、頻繁にカレンに会いに来てくれる。
寝込みがちで、約束を守れないこともある自分に、嫌な顔ひとつしないのだ。
雪国で生まれ育った、身体の弱いカレン。
伯爵家の生まれでなければ、6歳7歳といった年齢までやっていくのも難しかったかもしれない。
しっかり育っていけるのかどうか、育ったところで子を望める身体なのかどうかも、この時点ではわからなかった。
あの子は貴族としての務めを果たせるのだろうか、と冷たい目線を浴びることもある。
令息と会う約束をしていた日に体調を崩し、せっかく来てやったのにどういうことだ、と怒られたこともある。
けれど、ジョンズワートは違った。
身体の弱いカレンに愛想を尽かすこともなく、優しく微笑んで、何度でも会いに来てくれる。
カレンは、彼の手が、体温が、微笑みが、言葉が、彼のくれる素敵な贈り物が、好きだった。
もしもジョンズワートとの出会いがなかったら、カレンから笑顔は消えていたかもしれない。
本来であれば、それほどまでに、カレンが置かれている状況は厳しいものだったのだ。
ジョンズワートは、そんなカレンの心に、いつだって灯りをともしてくれた。
恋心と呼ぶには、まだ幼いものではあったが――カレンにとって、ジョンズワートの存在は救いで、大切な人で、大好きな相手だった。
何歳になったって、彼との思い出を、彼からもらった優しさを、忘れることなんて、できるはずがない。
アーネスト伯爵家の娘として指導する前に、無事に育つよう守る必要があったのだ。
カレンも大変な思いをしたが、彼女の3つ上のジョンズワートも、カレンとはまた違った方向に苦労をしていた。
ジョンズワートは名門公爵家の次期当主で、健康な男児だった。
加えて元より優秀で吸収も早く、真面目な性格だったものだから、親族や教師の期待もあり、デュライト公爵邸では日々厳しい教育を受けていた。
ジョンズワートがカレンにそのことを話すタイミングはほとんどなかったが、カレンだって伯爵家のご令嬢。
公爵家の彼が時間を持て余しているわけがないと、わかっていた。
それでもジョンズワートは、頻繁にカレンに会いに来てくれる。
寝込みがちで、約束を守れないこともある自分に、嫌な顔ひとつしないのだ。
雪国で生まれ育った、身体の弱いカレン。
伯爵家の生まれでなければ、6歳7歳といった年齢までやっていくのも難しかったかもしれない。
しっかり育っていけるのかどうか、育ったところで子を望める身体なのかどうかも、この時点ではわからなかった。
あの子は貴族としての務めを果たせるのだろうか、と冷たい目線を浴びることもある。
令息と会う約束をしていた日に体調を崩し、せっかく来てやったのにどういうことだ、と怒られたこともある。
けれど、ジョンズワートは違った。
身体の弱いカレンに愛想を尽かすこともなく、優しく微笑んで、何度でも会いに来てくれる。
カレンは、彼の手が、体温が、微笑みが、言葉が、彼のくれる素敵な贈り物が、好きだった。
もしもジョンズワートとの出会いがなかったら、カレンから笑顔は消えていたかもしれない。
本来であれば、それほどまでに、カレンが置かれている状況は厳しいものだったのだ。
ジョンズワートは、そんなカレンの心に、いつだって灯りをともしてくれた。
恋心と呼ぶには、まだ幼いものではあったが――カレンにとって、ジョンズワートの存在は救いで、大切な人で、大好きな相手だった。
何歳になったって、彼との思い出を、彼からもらった優しさを、忘れることなんて、できるはずがない。