若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「あのね、タルトはね、わとしゃがつくったの!」
「ワート様が?」
「うん。教わりながら作ったんだけど、初めてだったから、ちょっと不格好になってしまったけれど……」

 ショーンを抱きしめたままのカレンが、ジョンズワートを見上げる。
 ジョンズワートは、照れたように頬をかいた。
 たしかに、屋敷の料理人が作るものに比べれば、見た目は劣るだろう。
 しかし、未経験に近い人間が教わりながら作ったものだとは、思えない出来だった。
 ジョンズワートは、基本的に器用なのである。

「……ありがとうございます。ワート様。二人の気持ち、本当に嬉しいです。……タルトとお茶、みんなで一緒にいただきましょう?」

 ジョンズワートが作ったタルトが使用人の手で切り分けられ、それぞれの皿にのせられた。
 ショーンにハーブティーはまだ早かったようで、彼にはフルーツジュースが用意された。
 テーブルの真ん中には、ショーンが選んだバラが飾られ、タルトとハーブティー、ジュースが三人に行き渡る。
 親子三人の、穏やかな時間が流れていく。
 両親に「美味しい」「とてもきれいなバラ」と褒められ、ショーンは大層誇らしげだ。
 公爵邸の庭を舞台としたショーンの大冒険は、大きな成果をあげたのだった。
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