若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 もちろん、みながショーンのことを大事にする姿勢は変わらないのだが……。
 ショーンからすれば、面白くないものは面白くないのである。
 だって今まで、ショーンがこの家の唯一のアイドルだったのだから。
 今日もショーンは、ベビーベッドの前で妹に話しかける父を、物陰からじいっと見つめていた。
 自分にもかまえ。そんなオーラが出ているが、流石は公爵家の長男といったところか、5歳ほどにも関わらず、わあわあと声をあげることはしない。
 だがその分、ジョンズワートを見つめるその姿には、凄みがあった。
 黒いオーラと、哀愁。その両方が、ショーンからにじみ出ていた。

 ジェラシーモードのショーンと、娘にデレデレしていて、息子が見ていることに気が付かないジョンズワート。
 そんな膠着状態を崩したのは、母であるカレンだった。

「ショーン? そんなところでどうしたの?」
「! ははうえ……」

 子供部屋の前を通りかかったカレンが、中には入らずに父と妹を見つめ続けるショーンを発見した。
 二人のやりとりのおかげで、ようやくジョンズワートもショーンがいることに気が付く。
 ぱあっと笑顔で振り向くと、きみたちもおいでよ、と妻子に向かって手招きをした。
 しかし、ショーンは動かない。

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