若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「……で、まず、どこにいきましょうか」
「うーん……。ハンカチを贈るって言ってる子がいた」
「じゃあ、とりあえず見に行ってみますか」

 紳士向けの小物。
 ケーキや焼き菓子。
 酒とつまみ。
 飾りや置物。

 色々と見て回ってはみたが、なかなかしっくりくるものがない。

「チェストリーだったら、なにをもらったら嬉しい?」
 
 困ってしまったショーンは、町中のベンチで休憩しながら、そんな質問を投げかける。
 現在、チェストリーは一児の父だ。
 ショーンもそれを知っているから「自分の子からなにをもらったら嬉しいか」と聞きたいのだろう。
 チェストリーは少し考えてから、答える。

「……なんでも嬉しいと思いますね」
「なんでもって……」
「自分の子が一生懸命考えてくれたなら、なにをもらったって嬉しいですよ。それが親ってもんです。ジョンズワート様も、同じだと思いますよ」
「ふうん……」

 子供を持つチェストリーがそう言うなら、ジョンズワートも同じなのだろう。
 一応、納得はできたのだが、なにを選べないいのかわからない、という問題は解決していない。

「なんでも……」

 そう呟きながらもショーンは立ち上がり、もう一度、店を巡る。
 町を歩く途中、露店の前を通りかかった。
 なんでも、各国の珍しい品を取り揃えているそうで、たしかに、この国ではあまり見ないものが多く並んでいた。
 チェストリーも「これはすごいな」と感心しているから、粗悪な模造品などでもなさそうだ。
 その中に、特に強くショーンの興味を引くものがあった。
 ショーンは同じものを2つ購入。片方は、他店で料金を払ってプレゼント用のラッピングをしてもらった。
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