若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 そうして迎えた父の日。
 ショーンは、家族揃っての夕飯のあと、父に向かって小袋を差し出した。

「……父上、これ」
「ん? どうしたんだい、ショーン」

 これが初めてであったために、なんとなく気恥ずかしくて。
 父の日のプレゼントだと、言い出すことができない。
 ジョンズワートのほうも、今までこんなことがなかったために、すっかり忘れているようできょとんとしている。
 助け舟を出したのは、やはりカレンだった。

「……ワート様。父の日のプレゼントじゃありませんか?」
「父の日? ああ、そっか。今日だったか……」

 ジョンズワートは、確認するように息子を見やる。
 ショーンは、ちょっと頬を染めながらも、こくこくと頷いた。

「ありがとう。ショーン。中を見てもいいかい?」

 丁寧にラッピングされた袋を、ジョンズワートが受け取る。
 こういうのを恥ずかしがる年頃になったんだな、なんて思いながら、息子の頭を軽く撫でて。
 中を見てもいいかと優しい声色で尋ねると、ショーンはやはり無言で頷いた。
 プレゼントを開封するジョンズワートを、ショーンはドキドキしながら見つめる。
 このとき、家族が揃った部屋に控えていたチェストリーも、それなりにドキドキしていた。
 何故なら――

「これは……?」

 ジョンズワートの手元から、ちゃり、と音がなる。
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