若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 後日、ジョンズワートがアーネスト家にやってきた。
 彼が身に纏うのは、白をベースに青を取り入れた正装で。
 やはり、金髪碧眼の彼によく似合っていた。
 父親からあんな話をされた直後だったから、カレンにも、ジョンズワートの目的はわかっていた。
 
「久しぶりだね、カレン」
「……そう、ですね。ジョンズワート様」

 ジョンズワートの言う通り、こうして会うのは本当に久しぶりだった。
 元より上背のあったジョンズワート。23歳となった今では更に身長が伸び、カレンは彼を見上げなくてはいけない。
 カレンの周囲にいる男性と比べてもジョンズワートは背が高く、すらりとしていてスタイルもいい。
 カレンが怪我をしたあのときから、8年が経ったのだ。
 当時はまだ少年らしさも残っていたジョンズワートは、すっかり大人の男になっていた。
 よく整えられたクリーミーブロンドと深い青の瞳からは、落ち着きと気品が感じられる。
 彼が柔らかく微笑んだら、多くの女性は心を奪われてしまうだろう。
 ……きっと、サラだって。彼のそばにいれば、恋に落ちるに決まっている。

「……いい天気でよかった」

 二人で庭へ向かう途中、ジョンズワートがそう呟いた。
 この土地としては珍しく、今日は穏やかな日差しが降り注いでいた。
 だからか、カレンとジョンズワートは、アーネスト家の庭で話すことになっている。
 今頃、庭の一画でお茶の準備が行われているのだろう。
 ジョンズワートとともに歩きながら、カレンはちらりと彼を見上げる。
 月並みな言葉だが――やっぱりこの人は素敵だ、大人になった姿もとてもかっこいい、と思った。
 近くを歩いているだけでぽーっとしてしまうぐらいだ。
 何人もの男性に会ってきたけれど、こんな風にはならなかった。
 見た目だけでいえば、ジョンズワートに並ぶほどの人もいたのにだ。
 いつも近くにいるチェストリーなんて、容姿だけで食べていけそうな美形である。
 それでも。カレンがときめくのは、ジョンズワートなのである。
 
 ジョンズワートのことは、過去や思い出にしたつもりだった。
 けれど、こうして彼と共に歩いたことで、わかってしまった。
 カレンは、今もジョンズワートのことが好きだ。
 他の誰とも違う。こんな気持ちも、こんな胸の高なりも、他の人に感じたことはない。
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