若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 クリーミーブロンドの髪に、深い青の瞳。
 そんな色を持つからか、ジョンズワートは、落ち着いた、大人っぽい印象を他者に与える。
 服装も、公爵家の人間らしく上等かつ上品な、青と白を基調としたものを身につけている。
 見た目だけではない。公爵家の長男として教育されてきたことに加えて、本人も優しい性格だからか、言動も大人びている。
 だが、年齢はカレンの3つ上。この時点では、彼も10歳に満たない。
 ……あまり外に出られない子が相手とはいえ、女子への贈り物が貝殻や葉っぱなあたりは、子供らしいが。

「いつもありがとうございます、ワートさま」

 親しみや喜びであふれる声色に、ふわっとした笑み。
 それを真正面から受け止めることになったジョンズワートは、ぽっと頬を染めて「よかった」「これくらい、別にどうってことは……」「また持ってくるよ」と落ち着かない様子だ。
 こうやってカレンがお礼を言うと、ジョンズワートはもごもごそわそわし始める。
 なんだかよくわからなかったが、カレンはそんなジョンズワートを好ましく思っていた。


 ジョンズワートは、アーネスト家を訪れては色々なものをカレンに見せてくれる。
 貝殻。木の実。花。葉っぱ。セミの抜け殻を持って来て、カレンを怯えさせたこともある。
 言ってしまえば、どれもそこらで拾える、珍しくもなんともないものなのだが……。
 あまり外に出ることができないカレンにとっては、とても嬉しい贈り物だった。
 自分の足では見にいけないもの、取りに行けないものを、ジョンズワートがカレンの元まで運んでくれる。
 心が曇りそうになったときでも、カレンを笑顔にしてくれる。
 カレンは、そんなジョンズワートのことが大好きだった。
 まだ恋ではなかったかもしれないけれど、まだ幼い彼女は、確かに、彼のことが大好きだったのだ。

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