若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

 けれどジョンズワートは、その「お役目」よりも、彼女の心と身体を優先したくて。
 可愛いカレンに、そんな無理をさせたくなくて。これをきっかけに、自分が暴走してしまうのが怖くて。
 なにもせず、部屋に帰してしまった。
 それ以上彼女のそばにいたら、言葉を交わしたら、理性を飛ばしてしまいそうだったから、背を向けて、言葉も少なく。彼女を拒絶した。
 そのときは、それが正解だと思っていた。
 だって、自分たちにはこれから先があると思っていたのだ。
 タイミングを見て、拒んだ理由を後で話せばいいと、そう思ってしまった。

 だが、カレンの死亡説まで流れる今となっては。

「あのとき、拒んでいなければ。もっと、言葉を交わしていれば。あれが、最後だったのかもしれないのに」

 自分の部屋で。一度はカレンと時間を共にしたベッドで。ジョンズワートは、力なく呟いた。
 ジョンズワートは、あの日のことをひどく後悔していた。
 心は伴っていなくとも、あの時カレンに触れていれば、ここまで絶望しなくて済んだのだろうか。
 今になってそんなことを思ったって、もう遅い。ジョンズワートが彼女に触れることは……もう、できないのだ。
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