若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「ただいま。ショーン。カレリア」
「おとーしゃん!」
「おかえりなさい、あなた」

 まだ明るい時間に、獲物を担いだチェストリーが帰宅した。

「今日はずいぶん大きな獲物がとれたのね」
「運ぶのが大変だったよ。これから処理するから、ショーンは離れてるんだぞ」
「えー」

 ぶすっとするショーンを、カレンがなだめる。
 刃物を使うから、子供がうろうろしていると危険なのだ。

「ショーン。母さんと遊んでくれる?」

 ショーンはまだむーっとしていたけれど、カレンと手を繋ぎ、大きな木の下へ向かって行った。
 チェストリーと同じく、カレンも髪を切った。
 腰まで届く長さから、肩につくかどうかぐらいに。
 さらさらとなびく美しい髪が見れないのは、少し寂しいが。今のカレンも、十分すぎるぐらいに綺麗だと、チェストリーは思っていた。
 夫婦を装っているものの、今も心は軽口を叩く従者だから、綺麗だなんて言わないが。
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