若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「ワート。また再婚の話が来てるぜ」
どこか疲れた風にジョンズワートに声をかけたのは、部下で親友のアーティだ。
彼は数枚の封筒を持っていた。
それを横目に見て、ジョンズワートは即答。
「断ってくれ」
「誰が相手か、見も聞きもしないのな」
「当たり前だ。カレンという人がいるのに、再婚なんて」
「……そうだな」
こうなるとわかっていたのだろう。アーティも食い下がることなどせず、小さくため息をついてこの話を終わりにした。
「カレンは、生きている」
デュライト公爵が、誘拐されて死亡説まで流れる妻を探し続けているというのは、ホーネージュでは有名な話だ。
けれど4年経っても見つからないし、ジョンズワートももうそれなりの年だ。
公爵という立場。見目のよさ。妻を探し続ける愛情深さ。
彼に惹かれて、再婚相手になることを望む者は少なくない。
カレンの生存を信じる彼はそれらを全て断っているのだが、その想いの強さが更に女性を惹きつけ、話が広まってしまうのだ。
愛する妻を探し続け、再婚もしない。
どんなに想いを綴っても、顔を合わせたときにアピールしても、検討すらしてもらえないのだ。
他者が苦しくなってしまうほどに一途で、愛妻家の公爵。
ジョンズワート・デュライトの話は、他国にまで届くほどになっていた。
しかしこれは、カレンにとっては誤算であった。
冬季に誘拐と死亡の偽装まで行えば、早期に捜索が打ち切られ、みな諦める。
その「みな」にはジョンズワートも含まれている。
他国で暮らすカレンは、もうとっくに自分は死亡扱いだと思っていたのである。
けれどジョンズワートは、4年経っても諦めていなかった。
ジョンズワートが今も自分を探しているだなんて、考えてもいなかった。
有名になってしまったものだから、その気になれば、彼が妻を探し続けていることは、ラントシャフトの人間でも知ることができる。
しかし、彼に関する情報を遮断するカレンは、その事実を知らないままだった。
どこか疲れた風にジョンズワートに声をかけたのは、部下で親友のアーティだ。
彼は数枚の封筒を持っていた。
それを横目に見て、ジョンズワートは即答。
「断ってくれ」
「誰が相手か、見も聞きもしないのな」
「当たり前だ。カレンという人がいるのに、再婚なんて」
「……そうだな」
こうなるとわかっていたのだろう。アーティも食い下がることなどせず、小さくため息をついてこの話を終わりにした。
「カレンは、生きている」
デュライト公爵が、誘拐されて死亡説まで流れる妻を探し続けているというのは、ホーネージュでは有名な話だ。
けれど4年経っても見つからないし、ジョンズワートももうそれなりの年だ。
公爵という立場。見目のよさ。妻を探し続ける愛情深さ。
彼に惹かれて、再婚相手になることを望む者は少なくない。
カレンの生存を信じる彼はそれらを全て断っているのだが、その想いの強さが更に女性を惹きつけ、話が広まってしまうのだ。
愛する妻を探し続け、再婚もしない。
どんなに想いを綴っても、顔を合わせたときにアピールしても、検討すらしてもらえないのだ。
他者が苦しくなってしまうほどに一途で、愛妻家の公爵。
ジョンズワート・デュライトの話は、他国にまで届くほどになっていた。
しかしこれは、カレンにとっては誤算であった。
冬季に誘拐と死亡の偽装まで行えば、早期に捜索が打ち切られ、みな諦める。
その「みな」にはジョンズワートも含まれている。
他国で暮らすカレンは、もうとっくに自分は死亡扱いだと思っていたのである。
けれどジョンズワートは、4年経っても諦めていなかった。
ジョンズワートが今も自分を探しているだなんて、考えてもいなかった。
有名になってしまったものだから、その気になれば、彼が妻を探し続けていることは、ラントシャフトの人間でも知ることができる。
しかし、彼に関する情報を遮断するカレンは、その事実を知らないままだった。