【短編】叶うなら、もう一度あなたに会いたい〜不思議な縁〜
◆◆◆◆◆
店主さんと私はさっき紅茶を飲んだ部屋の、向かい側にある部屋にお客さんを招き入れた。
この部屋の壁には、高さが天井まである棚が置いてあり、私がお店の方で落としてしまったスノードームと同じ物が沢山並んでいた。スノードームの中に入っている木も同じで、葉がすべて落ちてしまっている木だ。
でもその中に一つだけ、花をつけている木があった。
可愛らしい、薄ピンクの花。
……もしかして、桜の木だろうか。
そうに認識した途端──、ちりりと胸を焦がす感覚が私を苦しませる。
どうして思い出せないんだろう?
あの人の声も、顔も。
あの人に見せてもらった、満開の桜の木は思い出せるのに。
なのにっ……、
「──最近、好きな人が私を避けている気がするんです」
「ほう?」
耳に馴染む店主さんの声ではっとして、顔をあげる。
ふるふると軽く頭をふって私は思考を中断し、相談に来た人の話に耳を傾けた。
「そのっ彼──青木くんとは、クラスが違うんです。でもよく廊下とかですれ違うと、目が合ったりして……」
テーブルの向かいに座っているお客さん── 田崎美穂さんは、私と同じ高校の生徒だった。
私自身、今年高校に入学したばかりだから彼女を見ても誰だかわからなかったが、制服の校章の色からしてきっと学年が上の先輩だろう。
「青木くんは、照れくさそうに私に話しかけてくれるんです。だから……両想い、だと勝手に思ってたんです」
「──が、ある日を境に避けられるようになったと」
「……はい」
店主さんの一言で、ずうんと顔色が悪くなる田崎さん。
店主さんは自分の顎を撫でて、「どう思う? お客人」と私に聞いてきた。
「えっ!? あ、えっと……避けられるような心当たりは田崎さんにはないんですよね?」
突然のことに声がひっくり返りながらも、どうにか言葉を捻り出す。
店主さんと私はさっき紅茶を飲んだ部屋の、向かい側にある部屋にお客さんを招き入れた。
この部屋の壁には、高さが天井まである棚が置いてあり、私がお店の方で落としてしまったスノードームと同じ物が沢山並んでいた。スノードームの中に入っている木も同じで、葉がすべて落ちてしまっている木だ。
でもその中に一つだけ、花をつけている木があった。
可愛らしい、薄ピンクの花。
……もしかして、桜の木だろうか。
そうに認識した途端──、ちりりと胸を焦がす感覚が私を苦しませる。
どうして思い出せないんだろう?
あの人の声も、顔も。
あの人に見せてもらった、満開の桜の木は思い出せるのに。
なのにっ……、
「──最近、好きな人が私を避けている気がするんです」
「ほう?」
耳に馴染む店主さんの声ではっとして、顔をあげる。
ふるふると軽く頭をふって私は思考を中断し、相談に来た人の話に耳を傾けた。
「そのっ彼──青木くんとは、クラスが違うんです。でもよく廊下とかですれ違うと、目が合ったりして……」
テーブルの向かいに座っているお客さん── 田崎美穂さんは、私と同じ高校の生徒だった。
私自身、今年高校に入学したばかりだから彼女を見ても誰だかわからなかったが、制服の校章の色からしてきっと学年が上の先輩だろう。
「青木くんは、照れくさそうに私に話しかけてくれるんです。だから……両想い、だと勝手に思ってたんです」
「──が、ある日を境に避けられるようになったと」
「……はい」
店主さんの一言で、ずうんと顔色が悪くなる田崎さん。
店主さんは自分の顎を撫でて、「どう思う? お客人」と私に聞いてきた。
「えっ!? あ、えっと……避けられるような心当たりは田崎さんにはないんですよね?」
突然のことに声がひっくり返りながらも、どうにか言葉を捻り出す。