私たちの復讐法

第九話

私はその様子を実家のお好み焼き屋で見ていた。この店も古くなったもんだわ。

「路子もえらいもんだわ、この街のニュースターやん」
「そんな恥ずかしいこと言わんで」
「あのテレビ出た時はうちも恥ずかしかったけども、今はすごいやないの。まぁあとはいいお婿さんと孫だけやな」
「……うるさいて」
私は実は方言がひどくて口が悪く聞こえるから喋り方には苦労したし、実家にいた頃はずっと汗だくでお店の手伝いをしてたから身なりも気にしてなかった。

「にしても……また気付かないのかね、あの謙二郎くんとやらは」
母が大きくお好み焼きを裏返した。とても慣れたもんだ、て当たり前か。ここの店主、我が家の大黒柱様だったもの。手首は腱鞘炎は慢性的だから痛いのも慣れたらしいけども。


「気づかんやろ……あいつは」
私は鼻で笑う。
「うちが離婚して苗字変えたし、あんたは昔に比べて顔変わったしね」
「私は整形じゃない、メイクの力やて」
わたしは母の焼いたお好み焼きにソースと鰹節をかける。そう、母は離婚した。だから彼女が女で一つで私を育ててくれたのだ。

「あの謙二郎って男もよーけ上手く雲隠れしたのー」
「そうね、でもうちらからしたら雲隠れにもなってないわ」
「そやの」
私はたちはケラケラ笑う。

「……謙二郎はこの町では妾の子として言われとった」
「あっちは苗字変えてもバレとるわ、誰との子だってのはね」

母はドスッとヘラでお好み焼きを切った。
「妾が本妻と長女を追い出してあのホテルを乗っ取った……未だに許されんよ」

私はその切り分けられたお好み焼きを大皿に入れた。

そう、私たち母娘は元の苗字は

平良

であった。
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