新そよ風に乗って 〜憧憬〜
「それで?」
「で、ですから……我が社を今以上に上昇気流にのせるためには、失敗は許されないんですよ」
「ふむ。では、その失敗は許されないという具体案を聞こう」
「それは……」
「とても興味深い。失敗せずに我が社が上昇出来るのであれば、幾らでも企業努力は惜しまん。教えて欲しい。その具体案を。専務」
「そ、それは、その……」
そこまで言って、言葉に詰まった内田専務は視線を泳がせた。
「では、私から」
社長は、居住まいを正した。
「言うは易く、行うは難し。言うのは簡単だ。だが、やる方は血の滲むような努力をしている。いざ、やるとなると大変だということを、此処に居る人間の何人が身近に感じているんだ? かつて、自分達が通ってきた道程を忘れてしまったのか? それとも、自分達もされたから同じことを部下にしたり簡単に言うのか? 前者なのか後者なのかは、今はどうでもいい。言ったからには、やってみせてくれ。それが出来ないのならば、たとえ道中躓くことがあっても、遠回りしていると後々分かったとしても、それに従え。もう1度言う。言うは易く、行うは難しだ。逆の立場になった時、今まで何をしてきた? と聞かれたら何と応える? 経営危機に此処まで陥る前に、気づける時間は幾らでもあった。何故、此処までになる前に、何も手を打たなかった? と問われたら、何と応える? 何もせんで、手をこまねいていただけだっただろう。平々凡々な毎日を、ただ会社と家の往復をしていただけだろう? たとえ、そうではなかったとしても、結果が全てを表していると言われたらどう応える? 部下に、何を今までしてきた? と聞かれて、胸を張って出来ることは全てやってきたと言い切れるのか? それを、部下に言わせてどうする。部下にそこまで言わせるだけ、私達が醜態を晒していたということだとどうして思わん。手をこまねいて見ているだけだった自分達に、必死に会社を建て直そうとしている社員が孤軍奮闘している姿を見て、何も感じないのか? それを感じるどころか、その芽さえ摘もうとしている諸君を見苦しく感じる」
そう言うと、社長は握っていたペンの後ろでテーブルの上の書類を叩いた。
そして、大きく深呼吸すると、社長は握っていたペンを書類の上に置いて両手を組んだ
「優秀な人材とは……」
社長はそこまで言い掛けて、高橋さんを見た。
「高橋君も、よく聞いてくれ」
社長?
「座って」
「はい」
高橋さんは社長に言われ、お辞儀をすると席に着いた。
「で、ですから……我が社を今以上に上昇気流にのせるためには、失敗は許されないんですよ」
「ふむ。では、その失敗は許されないという具体案を聞こう」
「それは……」
「とても興味深い。失敗せずに我が社が上昇出来るのであれば、幾らでも企業努力は惜しまん。教えて欲しい。その具体案を。専務」
「そ、それは、その……」
そこまで言って、言葉に詰まった内田専務は視線を泳がせた。
「では、私から」
社長は、居住まいを正した。
「言うは易く、行うは難し。言うのは簡単だ。だが、やる方は血の滲むような努力をしている。いざ、やるとなると大変だということを、此処に居る人間の何人が身近に感じているんだ? かつて、自分達が通ってきた道程を忘れてしまったのか? それとも、自分達もされたから同じことを部下にしたり簡単に言うのか? 前者なのか後者なのかは、今はどうでもいい。言ったからには、やってみせてくれ。それが出来ないのならば、たとえ道中躓くことがあっても、遠回りしていると後々分かったとしても、それに従え。もう1度言う。言うは易く、行うは難しだ。逆の立場になった時、今まで何をしてきた? と聞かれたら何と応える? 経営危機に此処まで陥る前に、気づける時間は幾らでもあった。何故、此処までになる前に、何も手を打たなかった? と問われたら、何と応える? 何もせんで、手をこまねいていただけだっただろう。平々凡々な毎日を、ただ会社と家の往復をしていただけだろう? たとえ、そうではなかったとしても、結果が全てを表していると言われたらどう応える? 部下に、何を今までしてきた? と聞かれて、胸を張って出来ることは全てやってきたと言い切れるのか? それを、部下に言わせてどうする。部下にそこまで言わせるだけ、私達が醜態を晒していたということだとどうして思わん。手をこまねいて見ているだけだった自分達に、必死に会社を建て直そうとしている社員が孤軍奮闘している姿を見て、何も感じないのか? それを感じるどころか、その芽さえ摘もうとしている諸君を見苦しく感じる」
そう言うと、社長は握っていたペンの後ろでテーブルの上の書類を叩いた。
そして、大きく深呼吸すると、社長は握っていたペンを書類の上に置いて両手を組んだ
「優秀な人材とは……」
社長はそこまで言い掛けて、高橋さんを見た。
「高橋君も、よく聞いてくれ」
社長?
「座って」
「はい」
高橋さんは社長に言われ、お辞儀をすると席に着いた。