新そよ風に乗って 〜憧憬〜
「男って、かなりロマンチストなんです。だから、別れてからたとえ酷い女だったと周りから言われても、自分にとっては好きになった女性ですから。やっぱり、良い想い出だけが残っているものなんです。良いことばかりじゃなかったはずなんですけどね。不思議と過去の女性との想い出は、殆ど良いことだけを思い出しますから。ハハッ……。男って、単純なんですよ。これは、私だけに当てはまることかもしれません。でも、男は大方そうだと思いますよ」
好きになった女性には、良い想い出だけが残っている。
「でも、それは今があるからそう思えるんですから、過去の女性より今自分の隣に居る女性の方が大切ですし魅力も感じます。あっ……申し訳ありません。少し、喋り過ぎてしまいました」
「そんな、とんでもないです。応えづらいことをお聞きしてしまって、ごめんなさい」
「いいえ。どうぞ、ごゆっくり」
すると、ちょうど高橋さんが戻ってくるところだった。
「お電話、大丈夫ですか? 中原さんからの呼び出しじゃなかったですか?」
旅行を途中で抜け出して来てしまっていたので、とても気になっていた。
私が居ないことなんて誰も気付くはずもないけれど、高橋さんが居ないのはやはり目立ってしまうから。
「ハハッ……。そこら辺は中原が上手くかわしてくれているはずだし、今更行っても始まらないだろう?」
「そうでしょうか……」
私のせいだから、本当に申し訳ないな。
高橋さんだって、旅行を楽しみにしていただろうし。
< 116 / 311 >

この作品をシェア

pagetop