新そよ風に乗って 〜憧憬〜
こんなに馴れ馴れしく話し掛けたら、いけなかったんだ。いけない、いけない。
言い聞かせるようにして、気持ちを引き締めた。
「それは、良かった」
高橋さんはウーロン茶を飲みながら、一緒に運ばれてきた海鮮サラダを小皿に取って食べ始めた。
「これも旨いから、食べてごらん」
何時の間にか、取り分けてくれてあったサラダが目の前に置かれていて、高橋さんが指さした。
「ありがとうございます」
和食のお任せが運ばれてきて食べ始めたが、緊張しているせいかやたらと喉が渇き、あっという間にグラスが空いてしまっていた。
「何か、お作りしますか?」
マスターに聞かれて、思わず高橋さんの顔を見る。
「飲む?」
「はい」
「ハハッ……即答かよ。じゃあ……そうだな。XYZカクテルを」
「かしこまりました」
マスターは高橋さんのオーダーを聞くと、背を向けながらカクテルを作り始め、ご飯も食べ終わってお腹がいっぱいになった頃には、3杯目のおかわりをしていた。
「フローズン・ストロベリー・マルガリータでございます」
「うわぁ。デザートみたい。イチゴがのってるぅ」
「デザート感覚でアルコール飲まれたら、たまったもんじゃないな」
「でも、高橋さん。フローズンをオーダーされるなんて、分かっていらっしゃいますね」
「子供心、掴むのが上手いんですよ」
「ご謙遜を」
「えっ? 何のお話しですか?」
「旨いだろう?」
「はい。とっても」
「ありがとうございます」

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