新そよ風に乗って 〜憧憬〜
すっかりいい気分になっちゃって、キャトルを後にする。
この頃には少し緊張も解れていて、またしてもお会計で揉め、頑として譲らない高橋さんに根負けしてしまった。
もう!
高橋さんったら、相変わらずなんだから。
でも、何だかこんなことも懐かしく思えて、外に出ると心地よい風とともにアルコールの酔いも少しまわって来ていたせいか、お店の階段を上りながらフワフワいい気持ちで気が緩んだのか、階段を踏み外しそうになってしまった。
「キャッ」
2段ぐらい先を上っていた高橋さんが、咄嗟に落ちそうになった私の腕を掴んで支えてくれた。
「おい、おい。気をつけろよ」
「すみません」
「お前、飲み過ぎ。ほら、掴まれ」
高橋さんが、左手を差し出した。
エッ……。
差し伸べられたその手を、掴んでいいの?
それって、手を繋ぐことになるんじゃ……。
躊躇して高橋さんの左手を見ていると、高橋さんが私の右手を掴んで引っ張りながら階段を上り始めたので、驚きながらもそれに従って階段を上った。
駐車場までの道のりを、高橋さんと手を繋ぎながら歩いている。信じられない。酔ってるから、尚更夢のように感じられる。
高橋さんの左手から伝わる体温。
このまま、いつまでも駐車場に辿り着かなければいいのに。
そんな不謹慎な思いを、心の奥底で叫んでいる。
不思議だな。
こうしていると時間が戻っていくようで、凄く落ち着ける自分が存在する。高橋さんからしたら、たかが手を繫いでいるだけと思うだろうけれど。私には、それがとても重要なこと。
駐車場の車の前まで戻ってくると、夜空を見上げながら高橋さんが言った。
「さて、帰るか」
ロックを解除し、助手席のドアを開けて私を乗せてくれた。
「ありがとうございます」
駐車場を出るのに、高橋さんが車をバックさせている。
ああ。
いいな、このスタイル。
高橋さんの車をバックさせるその仕草が大好きで、助手席の背もたれの角を持ちながら車をバックさせている高橋さんの腕に思わず頭をも垂れかけてしまった。
この頃には少し緊張も解れていて、またしてもお会計で揉め、頑として譲らない高橋さんに根負けしてしまった。
もう!
高橋さんったら、相変わらずなんだから。
でも、何だかこんなことも懐かしく思えて、外に出ると心地よい風とともにアルコールの酔いも少しまわって来ていたせいか、お店の階段を上りながらフワフワいい気持ちで気が緩んだのか、階段を踏み外しそうになってしまった。
「キャッ」
2段ぐらい先を上っていた高橋さんが、咄嗟に落ちそうになった私の腕を掴んで支えてくれた。
「おい、おい。気をつけろよ」
「すみません」
「お前、飲み過ぎ。ほら、掴まれ」
高橋さんが、左手を差し出した。
エッ……。
差し伸べられたその手を、掴んでいいの?
それって、手を繋ぐことになるんじゃ……。
躊躇して高橋さんの左手を見ていると、高橋さんが私の右手を掴んで引っ張りながら階段を上り始めたので、驚きながらもそれに従って階段を上った。
駐車場までの道のりを、高橋さんと手を繋ぎながら歩いている。信じられない。酔ってるから、尚更夢のように感じられる。
高橋さんの左手から伝わる体温。
このまま、いつまでも駐車場に辿り着かなければいいのに。
そんな不謹慎な思いを、心の奥底で叫んでいる。
不思議だな。
こうしていると時間が戻っていくようで、凄く落ち着ける自分が存在する。高橋さんからしたら、たかが手を繫いでいるだけと思うだろうけれど。私には、それがとても重要なこと。
駐車場の車の前まで戻ってくると、夜空を見上げながら高橋さんが言った。
「さて、帰るか」
ロックを解除し、助手席のドアを開けて私を乗せてくれた。
「ありがとうございます」
駐車場を出るのに、高橋さんが車をバックさせている。
ああ。
いいな、このスタイル。
高橋さんの車をバックさせるその仕草が大好きで、助手席の背もたれの角を持ちながら車をバックさせている高橋さんの腕に思わず頭をも垂れかけてしまった。