新そよ風に乗って 〜憧憬〜
その懐かしい声に、思わず安堵してしまった。
「高橋さん」
佐藤君が驚いた声を出して、後ろを振り返った。
高橋さん……。
見ると、コピーをしていたんだと思う。用紙とファイルをいっぱい抱えた高橋さんが、佐藤君の後ろに立っていた。
帰ったんじゃなかったんだ。
コピー機のある場所は会議室の奥にあって、此処からでは死角になって見えない。私が会議室を出たのは高橋さんからは見えるけれど、私からは振り返らない限り見えなかったのだ。恐らく、コピー機の前に高橋さんは居たんだと思う。
エッ……。
ということは、もしかして高橋さんは佐藤君との会話を全部聞いていたの?
高橋さんが、コピーをしてきた用紙とファイルを机の上に無造作に置いた。
「お聞きしたいことが、あるんですが」
な、何?
いきなり、佐藤君が高橋さんに向き直った。
「何だ?」
高橋さんが席に着いて、コピーをしてきた書類を別のファイルに綴じながら佐藤君の方を見た。
「高橋さんと矢島さんは、付き合ってらっしゃるんですか?」
「佐藤君!」
いきなり、何を言い出すのよ。
だいたい、そんなこと聞かれても困る。高橋さんだって……。
普通、こんな所でそんなことは聞かない。そうでなくても、有り得ない。
恐る恐る高橋さんの方を見ると、高橋さんは手に持っていた書類を置いて机に肘を突くと、顎の下で手を組んだ。
「プライベートなことだし、それが君とどういう関係があるんだ?」
高橋さんは動じる素振りも見せずに、淡々とした口調で佐藤君に問い掛けた。
「僕は、その……。僕は、もし矢島さんが誰とも付き合ってないんだとしたら、僕にもチャンスがあると思うので、アタックしようと思っているんです。でも、もし……高橋さんとお付き合いされてるんだとしたら、潔く諦めますが」
「ちょ、ちょっと待って。やめてよ、佐藤君。何を言ってるの?」
何でこんな時に、高橋さんにそんなことを聞くのよ。そんなことされたら、私が駄目押しされるだけじゃない。
「高橋さん」
佐藤君が驚いた声を出して、後ろを振り返った。
高橋さん……。
見ると、コピーをしていたんだと思う。用紙とファイルをいっぱい抱えた高橋さんが、佐藤君の後ろに立っていた。
帰ったんじゃなかったんだ。
コピー機のある場所は会議室の奥にあって、此処からでは死角になって見えない。私が会議室を出たのは高橋さんからは見えるけれど、私からは振り返らない限り見えなかったのだ。恐らく、コピー機の前に高橋さんは居たんだと思う。
エッ……。
ということは、もしかして高橋さんは佐藤君との会話を全部聞いていたの?
高橋さんが、コピーをしてきた用紙とファイルを机の上に無造作に置いた。
「お聞きしたいことが、あるんですが」
な、何?
いきなり、佐藤君が高橋さんに向き直った。
「何だ?」
高橋さんが席に着いて、コピーをしてきた書類を別のファイルに綴じながら佐藤君の方を見た。
「高橋さんと矢島さんは、付き合ってらっしゃるんですか?」
「佐藤君!」
いきなり、何を言い出すのよ。
だいたい、そんなこと聞かれても困る。高橋さんだって……。
普通、こんな所でそんなことは聞かない。そうでなくても、有り得ない。
恐る恐る高橋さんの方を見ると、高橋さんは手に持っていた書類を置いて机に肘を突くと、顎の下で手を組んだ。
「プライベートなことだし、それが君とどういう関係があるんだ?」
高橋さんは動じる素振りも見せずに、淡々とした口調で佐藤君に問い掛けた。
「僕は、その……。僕は、もし矢島さんが誰とも付き合ってないんだとしたら、僕にもチャンスがあると思うので、アタックしようと思っているんです。でも、もし……高橋さんとお付き合いされてるんだとしたら、潔く諦めますが」
「ちょ、ちょっと待って。やめてよ、佐藤君。何を言ってるの?」
何でこんな時に、高橋さんにそんなことを聞くのよ。そんなことされたら、私が駄目押しされるだけじゃない。