新そよ風に乗って 〜憧憬〜
そうなんだ。今日は、これから高橋さんと一緒に会議に出席する。とはいえ、書記のような役目なんだけれど。
エレベーターに乗って会議室に向かう途中、高橋さんが不意に後ろを振り返った。
「いろんな面子が揃っているが、何も気にすることはない。矢島さんは、会議の内容を書き留めておいてくれればいいから」
「はい。何だか、緊張してきました」
「緊張しているのは、俺も一緒だ」
「えっ? 高橋さんも……ですか?」
「ああ。これから、俺は道化師に成り切る」
エッ……。
そう言って高橋さんは爽やかに微笑んで見せると、ちょうど扉が開いたエレベーターから降りたので、慌ててそれに続いた。
高橋さんが道化師って……何?
高橋さんに追いついて会議室に入ると、まだ誰も席に着いていなかった。
「矢島さん。名札の前に、このレジメを1冊ずつ置いていってくれるか。余ったら、1部自分で取って残りは持っていてくれ」
そう言って高橋さんは、書類の束を私に差し出した。
「はい」
言われたとおり、名札の前にレジメを置きながら気づいてしまった。思わず、手を止めて辺りを見渡すと想像したとおり……。
何、この偉い人ばかりの名前。みんな、取締役とその下ぐらいの人達ばかり。
「どうかしたのか? 足りないか?」
「あっ。い、いえ、大丈夫です。何でもありません」
慌てて作業を続けていると、案の定、偉い人達が次々と会議室に入ってきた。
「そうなんですよ。最近、忙しくてゴルフもご無沙汰で……」
「それは、いけませんな。また、近いうちに是非お手合わせを」
「よろしくお願いします」
「ハッハッハ……」
談笑しながら入ってきた取締役の後ろを通って、高橋さんに指示された席に座り気配を消していた。
「あれ? 矢島さんも、書記出席?」
エッ……。
「柏木さん」
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「最近、遭わなかったね」
「はい」
柏木さんとは、エレベーターで一緒になることがあったが、最近は出張に行っていたこともあってか一緒になることはなかった。
「書記、頑張ろうね」
「はい」
柏木さんは、いつも優しくて穏やかな人だな。先ほどから緊張しているが、隣に柏木さんが来てくれて少しホッとした。
エレベーターに乗って会議室に向かう途中、高橋さんが不意に後ろを振り返った。
「いろんな面子が揃っているが、何も気にすることはない。矢島さんは、会議の内容を書き留めておいてくれればいいから」
「はい。何だか、緊張してきました」
「緊張しているのは、俺も一緒だ」
「えっ? 高橋さんも……ですか?」
「ああ。これから、俺は道化師に成り切る」
エッ……。
そう言って高橋さんは爽やかに微笑んで見せると、ちょうど扉が開いたエレベーターから降りたので、慌ててそれに続いた。
高橋さんが道化師って……何?
高橋さんに追いついて会議室に入ると、まだ誰も席に着いていなかった。
「矢島さん。名札の前に、このレジメを1冊ずつ置いていってくれるか。余ったら、1部自分で取って残りは持っていてくれ」
そう言って高橋さんは、書類の束を私に差し出した。
「はい」
言われたとおり、名札の前にレジメを置きながら気づいてしまった。思わず、手を止めて辺りを見渡すと想像したとおり……。
何、この偉い人ばかりの名前。みんな、取締役とその下ぐらいの人達ばかり。
「どうかしたのか? 足りないか?」
「あっ。い、いえ、大丈夫です。何でもありません」
慌てて作業を続けていると、案の定、偉い人達が次々と会議室に入ってきた。
「そうなんですよ。最近、忙しくてゴルフもご無沙汰で……」
「それは、いけませんな。また、近いうちに是非お手合わせを」
「よろしくお願いします」
「ハッハッハ……」
談笑しながら入ってきた取締役の後ろを通って、高橋さんに指示された席に座り気配を消していた。
「あれ? 矢島さんも、書記出席?」
エッ……。
「柏木さん」
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「最近、遭わなかったね」
「はい」
柏木さんとは、エレベーターで一緒になることがあったが、最近は出張に行っていたこともあってか一緒になることはなかった。
「書記、頑張ろうね」
「はい」
柏木さんは、いつも優しくて穏やかな人だな。先ほどから緊張しているが、隣に柏木さんが来てくれて少しホッとした。