新そよ風に乗って 〜憧憬〜
「お前の親父さんだったら、きっと同じことをしたと思うから」
「同じこと?」
高橋さんは、父を知らないはず。生前、会ったことも無いし、話したこともないはずなのに。
「子を思わない親なんていない。お前があの日、此処に来ることを楽しみにしていたんだとしたら尚のこと。親父さんは、きっと自分のせいでお前が此処に来られなかったと思って気にしているに違いない」
お父さんが……気にしている。
「だから、俺は1日でも早くお前を此処に連れて来てやりたかった。親父さんのためにもな」
お父さんのためにも……。そこまで、高橋さんは考えて……。
「高橋さん……ヒクッ……」
「ん? 俺からのお悔やみだ。よく頑張ったな。もう、泣いていいぞ」
高橋さんが、両手を広げてくれている。
「思う存分」
ああ、高橋さん。
「私……私……わた……し」
迷うことなく、高橋さんの胸の中に飛び込んだ。
今まで必死に堪えてきたすべての感情が、この時とばかりに心が軋んで悲鳴をあげながら一気に体内から溢れ出した。
どれだけ泣いても、涙が枯れることはないと思っていた。どれだけ泣いても、悔やんでも、もう父が目の前に戻ってくることはない。どんなに願っても……。
泣くだけ泣いて抑えていた感情を表に出すと、不思議と心が落ち着いて来て涙も止まった。
あれ?
いつの間にか、気づくと高橋さんに堤の上に乗せられていた。
「高橋さん。ありがとうございました」
「少しは、落ち着いたか?」
「はい」
「四六時中では効果も薄れるが、偶にはストレートに感情を表に出して発散することも心のデトックスとして必要だ」
心のデトックス。
「同じこと?」
高橋さんは、父を知らないはず。生前、会ったことも無いし、話したこともないはずなのに。
「子を思わない親なんていない。お前があの日、此処に来ることを楽しみにしていたんだとしたら尚のこと。親父さんは、きっと自分のせいでお前が此処に来られなかったと思って気にしているに違いない」
お父さんが……気にしている。
「だから、俺は1日でも早くお前を此処に連れて来てやりたかった。親父さんのためにもな」
お父さんのためにも……。そこまで、高橋さんは考えて……。
「高橋さん……ヒクッ……」
「ん? 俺からのお悔やみだ。よく頑張ったな。もう、泣いていいぞ」
高橋さんが、両手を広げてくれている。
「思う存分」
ああ、高橋さん。
「私……私……わた……し」
迷うことなく、高橋さんの胸の中に飛び込んだ。
今まで必死に堪えてきたすべての感情が、この時とばかりに心が軋んで悲鳴をあげながら一気に体内から溢れ出した。
どれだけ泣いても、涙が枯れることはないと思っていた。どれだけ泣いても、悔やんでも、もう父が目の前に戻ってくることはない。どんなに願っても……。
泣くだけ泣いて抑えていた感情を表に出すと、不思議と心が落ち着いて来て涙も止まった。
あれ?
いつの間にか、気づくと高橋さんに堤の上に乗せられていた。
「高橋さん。ありがとうございました」
「少しは、落ち着いたか?」
「はい」
「四六時中では効果も薄れるが、偶にはストレートに感情を表に出して発散することも心のデトックスとして必要だ」
心のデトックス。