新そよ風に乗って 〜憧憬〜
「はい……。でも、思い出すたびに涙が出てしまって。きっと、これからもずっと……」
「去る者は、日々に疎し。だが、肉親は違う。血は、水より濃しだ。年月が経てば経つほど、会いたいと思う気持ちも強くなる。何年経っても忘れず、会いたいと願う。でもそれは、たとえもう会えなくても思い出すことによって、その人の供養になると俺は思うんだ。どんなに歳月が流れても、はっきりとした顔を忘れてしまっても、ずっと此処には居るだろう?」
高橋さんは、心臓の辺りを右手の拳で作ってトントンと叩いた。
此処には、居る。
そっと、自分の左胸を両手で触れた。
ずっと、忘れない。お父さんのこと。
「俺も、此処に居る人が居る」
「高橋さん……」
高橋さんの胸の中に居る人って……誰なんだろう?
「さて、そろそろ帰るか」
「あっ。はい」
高橋さんが手を差し伸べてくれたので、今夜は素直にその手を取って下に飛び降りようとした。
うわっ。
高橋さんが、堤から飛び降りた私の手をそのまま引き寄せ抱きしめた。
「あ、あの……」
堤から飛び降りたものの、高橋さんの腕の中にすっぽりと収まってしまったのでどうしていいか分からない。
「今夜は、ずっと一緒にいてくれ」
高橋さんが、私の髪を撫でながらそう呟いたので、驚いて顔を見上げた。
「お前を独りにしたくない」
「高橋さん……」
「もう、風呂も入ったみたいだし」
「えっ? な、何で、知ってるんですか?」
驚いた。
「去る者は、日々に疎し。だが、肉親は違う。血は、水より濃しだ。年月が経てば経つほど、会いたいと思う気持ちも強くなる。何年経っても忘れず、会いたいと願う。でもそれは、たとえもう会えなくても思い出すことによって、その人の供養になると俺は思うんだ。どんなに歳月が流れても、はっきりとした顔を忘れてしまっても、ずっと此処には居るだろう?」
高橋さんは、心臓の辺りを右手の拳で作ってトントンと叩いた。
此処には、居る。
そっと、自分の左胸を両手で触れた。
ずっと、忘れない。お父さんのこと。
「俺も、此処に居る人が居る」
「高橋さん……」
高橋さんの胸の中に居る人って……誰なんだろう?
「さて、そろそろ帰るか」
「あっ。はい」
高橋さんが手を差し伸べてくれたので、今夜は素直にその手を取って下に飛び降りようとした。
うわっ。
高橋さんが、堤から飛び降りた私の手をそのまま引き寄せ抱きしめた。
「あ、あの……」
堤から飛び降りたものの、高橋さんの腕の中にすっぽりと収まってしまったのでどうしていいか分からない。
「今夜は、ずっと一緒にいてくれ」
高橋さんが、私の髪を撫でながらそう呟いたので、驚いて顔を見上げた。
「お前を独りにしたくない」
「高橋さん……」
「もう、風呂も入ったみたいだし」
「えっ? な、何で、知ってるんですか?」
驚いた。