新そよ風に乗って 〜憧憬〜
食事が終わってお茶を飲みながら少し話をして、そろそろ寝ようということになったのは、もう1時近かった。
お泊まりセットを持ってきていないので、高橋さんの大きなダボダボのパジャマを借りて自分のサイズに合わすべく裾を何折りもしながら、やっぱりもう少し背が欲しかったなと切実に思ってしまった。
「高橋さん。今日は、ありがとうございました。おやすみなさい」
うわっ。
何も考えずにゲストルームの方に向かおうとして高橋さんに腕を掴まれ、何事かと直ぐ横に立っている高橋さんの顔を見上げた。
な、何?
「お前さぁ、何のために家に来たんだよ?」
「えっ?」
もう寝るものとばかり思ってゲストルームに向かおうとしていたので、その意味がよく分からず首を傾げてしまった。
「まったく……1人で寝てどうするんだか」
「な、何でですか? だって、キャッ!」
高橋さんが少し屈んだと思った途端、抱っこされてしまった。
「あ、あの、ちょ、ちょっと、すみません。高橋さん。降ろして下さい」
「嫌だねぇ」
そんな……。
高橋さんは、口端を少し持ち上げ怪しく微笑んだ。
「た、高橋さん……」
そして、自分の寝室のベッドの上に私を降ろすと、ポケットから携帯を取り出して棚の上に置き、電気を消してしまった。
「あっ!」
エッ……。
電気を消されて何も見えなくなってしまったので、このままジッとしているしかない。
うわっ。
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