新そよ風に乗って 〜憧憬〜
高橋さんに、はぐらかされてしまった?
そんな風に、高橋さんのことを思ったことなんてなかったのに。
「フッ……。子供には、まだ早い話だしな」
「な、何で、そういつも子供扱いするんですか?」
思わずムキになって、問い返してしまった。
「違う意味の待ってますかと思っ……何時からそんなにエロく……何やってんだ? でも……と思ったんだが……」
斜め後ろを向きながら、高橋さんが何か小声でブツブツを言っているが、よく聞こえない。
「あの、高橋さん。よく聞こ……」
「でも、今のってお前。何気に、俺に告ってんだよな?」
「えぇっ?」
「陽子ちゃぁん。告白、ありがっとぉう」
うっ、嘘だ。
私、もしかして告白しちゃったの? 
高橋さんが、にっこり微笑んでいるってことは、まさか……。
でも、そうだ。待ってますからなんて、高橋さんに告白しているのと一緒じゃない。
「ということは……だな。お前のことは、何時でも貰えるってことだ。ラッキー、貴ちゃん」
「そ、そんな……そんなつもりじゃ……」
高橋さんが、悪戯っぽく笑いながら親指を立てているのを見て、恥ずかしくて必死に後ろに下がろうしてシーツに後頭部を押しつけた。
「キャッ……」
「さっきの、つぅづきぃ。お子様には、これが精一杯だろう?」
「なっ……ンッ……ンッ……」
また高橋さんが、深く長いキスを何度も何度も私に落としていく。そのうち、それは首筋にまで達していた。
何だか、とてもくすぐったい。
首筋から耳へと移動した高橋さんの唇が、這うようになぞりながら私の頬に戻ってくる。
緊張して、ドキドキしながら震えそうな体にグッと力を入れながら静かにそれを受け入れていたが、さっきよりもどんどん時間が経つにつれて、何故かとても心地よく感じ始めている。
高橋さんを、こんなにも身近に感じたことがあっただろうか?
こんなに、好きでいいの?
もう、高橋さんから離れられない。
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