新そよ風に乗って 〜憧憬〜
国家情勢のことまでは、想定なんて出来なかったはず。それなのにお詫びだなんて、高橋さんのせいじゃないのに。
「それが、お詫び?」
エッ……。
「そんな事で、長々と時間を無駄に使ったんですか?」
ちょ、ちょっと、何?
何故、そこまで高橋さんが責められなければいけないの?
「申しわけございません。先を見越した思慮が足りませんでした」
「思慮が足りなかった? それだけでは、済まされないだろう? 我が社の存続が掛かっているんだぞ?」
「申しわけございません」
どうして、高橋さんがそこまで謝るの?
「我が社が存続の危機だからこそ、みんなの反対を押し切ってまで実行したんじゃなかったのか? 今頃になって、何を言い出す。もっと、前から分かっていたんじゃないのか?」
「就航直前になって言い出すとは、まさに確信犯だな。なまじ、ちょっと頭がきれるから質が悪い」
何故、そこまで……高橋さんが、いわれなき誹謗をされなければいけないの?
「そうですよ。大多数は反対だったのに、その反対を押し切ったじゃないですか。それを、何を今更。まだ蓋も開けないうちから既に負の要素満載とは、いささかお粗末過ぎるぞ」
高橋さん。
私には、よく分からない。ここまで高橋さんが、言われなければならないことなのだろうか? 会社のためを思って、いつも努力してきている高橋さんが……。
「ちょっと、いいかな」
社長が口を挟んだので、高橋さんに集中砲火を浴びせていた取締役達が黙った。
「木を見て、森を見ず。ライバル会社のLCC参入が想像以上に早かったことは、想定外だったはずだ。目先のことに囚われて、肝心なことが疎かになったんじゃないのか?」
「申しわけありません。おっしゃるとおりです。その件につきましたは、今、部下……」
「そんなことも、分からなかったのか。お粗末過ぎる」
すると、また取締役の1人が口を開いた。
「ごもっともですな。敗北を認めるのなら、我が社のためにならん。不愉快だ。直ぐに、責任を取って立ち去れ」
「……」
そんな! 言い過ぎている取締役に、社長は諫めて欲しい。何とか言って、社長。
ハッ!
知らぬ間に、パソコンのキーボードを打つ手を止めて両手の握り拳に力が入っていたらしい。その右手の拳を、軽く柏木さんがペンで叩いた。
「僕等は、手を動かそう」
耳元で、柏木さんが小声でそう囁いた。
その声に我に返り、黙って頷いてキーボードの上に両手を置いたが、この内容をとても打つきにはなれない。
「私、1人の責任なのでしょうか?」
エッ……。
静かな口調で、高橋さんがそう言った。
「それが、お詫び?」
エッ……。
「そんな事で、長々と時間を無駄に使ったんですか?」
ちょ、ちょっと、何?
何故、そこまで高橋さんが責められなければいけないの?
「申しわけございません。先を見越した思慮が足りませんでした」
「思慮が足りなかった? それだけでは、済まされないだろう? 我が社の存続が掛かっているんだぞ?」
「申しわけございません」
どうして、高橋さんがそこまで謝るの?
「我が社が存続の危機だからこそ、みんなの反対を押し切ってまで実行したんじゃなかったのか? 今頃になって、何を言い出す。もっと、前から分かっていたんじゃないのか?」
「就航直前になって言い出すとは、まさに確信犯だな。なまじ、ちょっと頭がきれるから質が悪い」
何故、そこまで……高橋さんが、いわれなき誹謗をされなければいけないの?
「そうですよ。大多数は反対だったのに、その反対を押し切ったじゃないですか。それを、何を今更。まだ蓋も開けないうちから既に負の要素満載とは、いささかお粗末過ぎるぞ」
高橋さん。
私には、よく分からない。ここまで高橋さんが、言われなければならないことなのだろうか? 会社のためを思って、いつも努力してきている高橋さんが……。
「ちょっと、いいかな」
社長が口を挟んだので、高橋さんに集中砲火を浴びせていた取締役達が黙った。
「木を見て、森を見ず。ライバル会社のLCC参入が想像以上に早かったことは、想定外だったはずだ。目先のことに囚われて、肝心なことが疎かになったんじゃないのか?」
「申しわけありません。おっしゃるとおりです。その件につきましたは、今、部下……」
「そんなことも、分からなかったのか。お粗末過ぎる」
すると、また取締役の1人が口を開いた。
「ごもっともですな。敗北を認めるのなら、我が社のためにならん。不愉快だ。直ぐに、責任を取って立ち去れ」
「……」
そんな! 言い過ぎている取締役に、社長は諫めて欲しい。何とか言って、社長。
ハッ!
知らぬ間に、パソコンのキーボードを打つ手を止めて両手の握り拳に力が入っていたらしい。その右手の拳を、軽く柏木さんがペンで叩いた。
「僕等は、手を動かそう」
耳元で、柏木さんが小声でそう囁いた。
その声に我に返り、黙って頷いてキーボードの上に両手を置いたが、この内容をとても打つきにはなれない。
「私、1人の責任なのでしょうか?」
エッ……。
静かな口調で、高橋さんがそう言った。