胡蝶ミラへのエクスプレス
第一章 『もう既に、出会っていた』
~森高 心《もりたか こころ》~
好きかも。と、好意を目の前に差し出されてしまい、私は小さな笑顔で頭を下げていた。
「最近ここちゃんとよく話すし、どうかなって思ってたんだけどね……」
最近って……え、話してた?
彼とは同じ学部だが、滅多に共通の授業を受けたりしないし、そこまで関わったことがないはずなのだが……彼は私を見て、曖昧に笑っている。
だだっ広い無機質な館内、校舎と校舎を繋ぐ廊下の真ん中で、私は笑顔で断ってしまった。
反響するはずもないのに、誰もいないからか、やけに二人の小さな声が響く。