胡蝶ミラへのエクスプレス
一瞬緊張感が走ったが、森高さんはすぐにニコッと笑うと車に乗り込んだ。あっさり笑顔で、その場を取り繕われる。
窓を開けてくれてお互い手を振ると、あっという間に車は見えなくなってしまった。
一人残されて、顔が熱くなる。
特別、なんだろうけど、その言葉をよく考えると恥ずかしいもんだな。
また、いつか来てくれるのだろうか。
来てくれた時は、美味しい物を一緒に食べられたら良いな……。
後から財布を握って俺の部屋を訪れた文音は、やはりにんまり微笑んでいるし、そういう顔をされることは分かっていたが、今日は森高さんに来てほしかった。
「そっか、やっぱりヒールの件は、こころさんだったんだね」
文音は嬉しそう。でも、俺がわがまま言ったから、森高さんは快く来てくれた。
きっとそれだけ、だと思う。