胡蝶ミラへのエクスプレス
「越智君、またどこか美味しい物食べに行こうね」
「もちろん、また行こう」
ありがとうって言って右手を差し出すと、森高さんはにこやかに握手をしてくれる。
森高さんの掌をギューッと握ること数秒。寂しい気持ちでいっぱいだが、パッと離して車を出た。ダメだ勢いで別れないと、無駄に何か言って引き留めてしまいそうだ。
「月曜日に学校で。休日で車も多いだろうから、気を付けて帰るんよ」
「ありがとう。越智君も夜はあったかくね。それじゃあ行くね」
森高さんは開けた助手席の窓の向こうで手を振ってくれて、車はやがて走り去っていった。