初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 室長は苦笑した。
「ほら、言ってるそばから、それだからな」
「まあもう9年ですからね。知り合って」

 都築がふざけてわたしの肩に手を回す。
 わたしはそれをうるさそうに振り払う。

「しかし、珍しいな。異性でそんなに長く友情が続くのは」
「そおっすかねー。でも、俺、こいつを女と思ったことはないんで」
「そうそう。単なる腐れ縁ですから」

 負けじとわたしもそう言い残して、自席に戻った。

「都築さん! 朱利先輩の子分の島崎麻央で〜す。どうぞお見知り置きを」
「麻央ちゃん……ね、よろしく」

 さすが、麻央だ、どんなチャンスも逃さない。
 
 席につき、暗いパソコン画面に映る自分の顔を眺める。

 みんなの前では本心を隠しつづけている顔。
 今も、心のなかでは麻央や都築が言った言葉がくすぶっていた。
 
――あんなイケダンと、よく清い関係でいられますよね。

――女と思ったことないんで。
 
 白状すれば、都築に出会った9年前からずっと、友情以上の気持ちを抱いている。

 実は、今でもそう。
 しつこすぎて自分でも笑えてくる。
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