初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「なんで室長にデートに誘われるのよ」
「なんでって、フリーじゃないですか。おふたりとも」

「あんたは何でもそっちに結びつけるよね。おっと、もう行かなきゃ。実は約束の時間、だいぶ過ぎてるんだ」
「何にしても、明日の報告、お待ちしてまーす」
 
 はい、はいと適当にいなして会社の前で麻央と別れた。


 待ち合わせの『El Topo』 に着くと、ここに腰を据えるつもりなのか、佐藤室長は奥の個室に陣取っていた。

 軽く一杯飲んで、恵比寿に移動するのかと思っていたんだけど、違うのかな。

「すみません。遅くなって」
「何かあった?」

「出掛けに河村繊維さんから確認の電話があって少し手間取りまして。でも、もう解決済みです」

「そう、ご苦労さん」
 わたしは室長の向かいに腰を下ろした。
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