初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「何?」
「なんでもないです。ただ若い子もポーッとさせちゃうなんて、室長の破壊力、半端ないって思っただけで」

 室長は意外そうな顔をして、目をまたたかせた。
「ポーッとって。興味を持つわけないだろう。あんな若い子がこんなおっさんに」
「またまたご謙遜を」

 でもこの人が言うと、嫌味にならないところが不思議だ。
 普通、これだけモテれば鼻にかけそうなもんだけど。

 それにしても、彼のお眼鏡に叶うのは、いったいどんな女性なんだろう。
 横にいて似合うのは楚々とした大和なでしこタイプ……かな。
 わたしとは真逆の。

 そんなことを思いながら、サングリアのグラスに手を伸ばし、室長のビールの入ったグラスに軽く合わせた。

「乾杯」
「いただきます」

 カット・オレンジで飾られたグラスを満たしているルビー色のサングリアをゴクリと一口。
 ああ、この味。やっぱり美味しい。

「美味しい?」
「はいっ。フルーツの酸味がワインによく合って、ほんと、天上的な美味しさなんですよ」
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