初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 彼は愉しそうに笑った。

「そんなに幸せそうな顔をされると、こっちも嬉しくなってくる。久保……あのさ」
と、室長は何か言いかけたけれど、なかなか口を開かない。

 なんか、いつもと様子が違う。
 不自然な沈黙が続く。

「室長……?」
  よし、と小さく気合いを入れて、室長はわたしに目を向けた。

「今日来てもらったのは、他でもないんだけど」
「はい」

「単刀直入に言うけど……、久保、僕と付き合う気ない?」
「えっ?」

 わたしは思わず手にしていたグラスを落としかけた。
 向かいの室長はふーっとひとつ、長い大きな息を吐いた。

「もどかしい1日だったよ。時間が経つのがとにかく遅くてね。落ち着かなかった」

 室長の言葉の意味を追いきれないほど、頭が混乱していた。
 

 なんか、とんでもないセリフを耳にしたような……

「あの……すみません。もう一度、お願いできますか?」
「僕と付き合って欲しいって言ったんだけど」
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