初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 わたしは小さな鉄鍋でくつくつと音を立てているアヒージョのエビを頬張った。

 どんな状況下であろうと、おいしいものはおいしい。
 わあ、ぷりぷりだ。

「ここのアヒージョ、ほんとおいしいですよね」

 そう言って、室長のほうに目をやると、彼は通常の何倍も優しげな瞳でわたしを見つめていた。

「その久保の食べっぷりも好みなんだよ、実は」

 わーっ! どうしよう。
 たぶん、暗い店内でも見分けられるほど、わたしの顔は赤くなっていると思う。

 やはり、とりあえず今の正直な気持ちを伝えておかなければ。

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