初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「女だよ。『あきとし』じゃなくて『朱利(あかり)』。昔からよく間違えられるけど」

「へえ、作品の印象で男だと思ったんだけどな。 まあ、どっちでもいいや」

 都築は続けた。
「俺、クチュール専攻の都築。文化祭に出品してたあんたの作品、気に入ってさ。ねえ、俺と組んでコンペに出品しない?」
「コンペって? 今年の?」
「ああ」

 そんなの、当然だろといった顔で都築は頷いた。

 コンペは文化祭に次ぐ、この学校の名物イベント。
 ファッションショー形式で行われ、採点を担うのは本校卒業生である著名なデザイナーたち。

 学外でも知名度が高く、上位入賞すれば就職に断然有利なので、出品する学生はとても多い。

 ただ、基本、参加者は2年生のみ。
 それに締め切りまで、あと2カ月もない。

 普通は1年かけて準備するものだから、どう考えても無謀な提案だ。

 今からじゃとても無理じゃないの? と言おうとしたとき、都築は手にしていたクロッキー帳を広げた。
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