初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「なんかさ、久保の作品見たら、創作意欲が湧いてきちゃって。これ、デザイン画。月の女神ディアナのイメージ。で、久保に頼みたいのは、頭に飾る三日月をモチーフしたファシネーターなんだけど……」

 断られることはまったく想定していないようで、都築は勝手に話を進めていく。
「ちょっと待ってよ。まだやるとも何とも言ってないけど」
「まあまあ。これ、見てって」

 そう言って、わたしの鼻先に自分のクロッキー帳をつきつけた。
 ずいぶん強引、と思いながら受け取り、そのページに目を落とした。

 ……すごい、何これ。
 この人、本当に同い年?

 一瞬、返事を忘れるほど、わたしはそのドローイングに見入った。

 巨匠の作品として美術館に展示されていてもおかしくないほどの完成度の高さだ。

 噂どおり、いや、噂以上にすごい人なんだ、都築くん。

 クロッキー帳に描かれていたのは美しいドレープが特徴的な銀のイブニング・ドレスだった。
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