初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 月のイメージというだけあって、クールで未来的だけどドレスらしいクラシカルな雰囲気もちゃんと残している。

 たぶん、彼は頭に浮かんだデザインをダイレクトに絵に起こせるのだろう。
 惚れ惚れするほどシャープでクリアな線がそれを物語っている。

「なあ、この服に合う帽子、作ってみたくない?」

 一目見せればOKすると思っていたんだ。
 どんだけ自信あるんだろう。

 でも……このドレスが完成したところ、確かに見てみたい。
 そして、わたしの作品がそこに加わる……のか。

「な、やろうぜ」
 彼は腰をかがめて、長めの前髪を掻きあげながら、わたしの顔を覗きこんでくる。

 やってみたいという気持ちと、無理だという気持ちが交錯する。

「でも、まだ1年だし。わたしたち」

「だから、余計にさ」と都築はすこし語気を強めた。

「グランプリ取ったらスゲーじゃん。伝説になる。でも、さすがに今から1人じゃ、作業量的に無理そうなんだ。頼む。力貸してよ。言ってみればあんたが俺をその気にさせたんだから、責任取ってよ」

「そんなこと言われても……」
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