初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
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翌日、校内のカフェで待ち合わせ、徹夜で描いたラフを見せた。
「気に入らなければ、遠慮なく言って」
ちょっと緊張気味に念を押す。
彼は真剣な表情でページをめくりはじめた。
行きつ戻りつしながら、あるページを開いて、それをテーブルに置いた。
「俺の目に狂いはなかったな。とくに、これがいい」
それは十数点描いたなかで、わたしもいちばん気に入っているものだった。
都築はテーブルごしに手を伸ばした。
「改めて、よろしく」
「こちらこそ」
そのとき、気づいた。
あっ、指輪してるんだ。
伸ばされた右手の薬指にシルバーのシンプルなリングが光っているのが目に入った。
イニシャルらしき刻印がされている。
どう見てもペアリングだよね、これ。
いるよね。彼女。
当たり前か。
外見も中身もこんなに魅力的な人だし。
いまさらそんなことにショックを受けている自分に呆れながら、わたしは彼の手を遠慮がちに握った。
「じゃ、また、メールするから」
「うん、わかった」