初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 
***

 翌日、校内のカフェで待ち合わせ、徹夜で描いたラフを見せた。

「気に入らなければ、遠慮なく言って」
 ちょっと緊張気味に念を押す。

 彼は真剣な表情でページをめくりはじめた。
 行きつ戻りつしながら、あるページを開いて、それをテーブルに置いた。

「俺の目に狂いはなかったな。とくに、これがいい」

 それは十数点描いたなかで、わたしもいちばん気に入っているものだった。

 都築はテーブルごしに手を伸ばした。
「改めて、よろしく」
「こちらこそ」
 そのとき、気づいた。

 あっ、指輪してるんだ。

 伸ばされた右手の薬指にシルバーのシンプルなリングが光っているのが目に入った。
 
 イニシャルらしき刻印がされている。

 どう見てもペアリングだよね、これ。
 いるよね。彼女。

 当たり前か。
 外見も中身もこんなに魅力的な人だし。

 いまさらそんなことにショックを受けている自分に呆れながら、わたしは彼の手を遠慮がちに握った。

「じゃ、また、メールするから」
「うん、わかった」
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