初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 教室の扉を開けた瞬間、「来た!」と女子のひとりが大声で言い、すぐに女子全員に取り囲まれた。

「ねえ、ちょっと、どういうこと? 朱利、いつ都築くんと知り合ったの?」

 カフェにいるところを誰かに見られていたらしい。
「いや、あっちから誘われて、コンペで組むことになって」

 ひえーと、悲鳴に近い叫びが上がった。
 教室の隅で話していた男子たちが、怪訝な顔で一斉にこっちを見てる。

「そんな抜け駆け、ずる過ぎるってー」

「しっかし、よりによって朱利とはねえ」
 クラスで一番の仲良しの角田がずけずけと言った。

「朱利、女要素、限りなくゼロなのにね〜」
「うるさいなー」

 そりゃ、わたしは背が高くて常にセンター・パートのショート・ヘアで、ひらひらキラキラした服は苦手で、シンプルでベーシックな服しか着ないし、よく言えばスレンダー、はっきり言えば、女性らしい曲線がまるでない体型だから、しょっちゅう男に間違えられてはいるけど。

「別に付き合ってくれって言われたわけじゃなし」

「えー、でも共同制作しようなんて、気があるんじゃない? 普通」
「それはない。彼女いるし、都築くん」
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