初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「へえ、そうなんだ。まあ確かに、あんたと都築氏が並んでても、彼カノって言うよりBLだけどね。朱利、デカいから」
「悪かったね」

 そんなこんなで周囲の注目を浴びながら、制作に忙殺される日々は幕を開けた。

 試作に試作を重ね、これで行こうと決まったのはデッドライン3週間前。
 それから大急ぎで縫製し、縫い上がったのが1週間前。

 けれどまだ、衣装と帽子に恐るべき数のビーズやスパンコールを刺繍するという地獄の作業が待っていた。

「これ、ぜったい間に合わないって。ちょっと数、減らそうよ」

 そのわたしの言葉に、都築は露骨にいやな顔をした。

「何言ってんの? 刺繍の緻密さがこの作品の出来不出来を左右するんだぜ。絶対減らせないって」

 頭ごなしに否定されたことで、わたしの負けず嫌いな性格に火がついた。
「わかった。やればいいんでしょ」

 都築はニヤっと笑った。
「そう来なくちゃ」

 ん? 何その顔。
 すでに負けず嫌いのこの性格、読まれてるってこと?
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