初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 彼が男であることを強烈に意識してしまい、慌てて目を閉じた。

 まるで気泡がはじけるように、胸の奥底に閉じ込めていた想いが一気にはじけた瞬間だった。

 ――あの筋張った太い腕で抱きしめられたい。
 
 身体の底から沸きあがってきたのは、そんな、生まれてはじめて感じた、息がつまるほどの欲望。
 
 そう。
 ただ、自分の気持ちを誤魔化していただけで、わたしは、もうとっくに、どうしようもないほど、都築が好きになっていた。

 コンペでグランプリを取るという目標を共有し、日夜、必死で作業をするうちに、都築とわたしのあいだには、急速に同志的な友情が生まれていた。

 でもそれはあくまで友情。
 恋愛感情までは、遥かに遠い。

 第一、都築には最愛の彼女がいる。
 
 今もデスクの前に貼られたツーショット写真のなかで、彼女は屈託のない顔で幸せそうに笑っている。

 いくら好きになっても無駄だとわかり切っていたから、今まで、都築を男性として意識しないように必死に自分を抑えていた。
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