初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 まず、買ったそばから、ひと缶開ける。
 プルトップを開けてぐいぐい飲む。

「あー、勝利の美酒はサイコー」
「こっちにもよこせよ」
「うん」
 
 もう一口飲んでから、都築に渡す。

「げ、もう半分もねーじゃん。その飲みっぷり、お前、もう性転換したほうがいいんじゃね」

「うるさい。どうせ、今だって女だと思ってないくせに」
 
 訳がわからなくなるほど、酔いたかった。
 この後ろめたさから逃げるために。
 でも飲んでも飲んでも、頭は冴えてゆく一方で。

 今晩だけだから。
 わたしたちにとって、特別な夜だから。

 わたしが、都築を独占することなんて、もう二度とないから許して。

 わたしは心の中で、ユキちゃんに詫びていた。



 夜もだんだん更けてきて、身体の芯まで凍りつきそうなほど寒くなってきた。

 でも、そんなことにはお構いなく、わたしたちふたりは、チューハイを煽りながら、街を闊歩して、野放図で気ままな夜を満喫していた。
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