初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 寒さで歯をガチガチ言わせている都築が、なんだかおかしくて、わたしはケタケタ笑った。
「何笑ってんだよ、貸せよ、なあ」

 おなかの底からおかしくて、わたしは笑いつづけた。
 やっぱり酔いが回っていたんだろう。
 まったく笑いが収まらなかった。

「取れるもんなら取ってみ」
 そう言って、ショールをぎゅっと握りしめた。

 すると都築は、背後から手を回し、わたしの手をつかんだ。
「ほら、その手、離せって」

 ん? これって。
 バックハグ……されてる、みたいな。
 
 背中に感じる都築の体温にとまどい、わたしは素直に手を放した。
 都築はぐるぐるとショールをほどいてしまう。

「もー、寒いって」
「ほら、こうすりゃふたりともあったかいだろ?」
 彼はふたり一緒にショールをかけ、わたしの肩に腕を回してきた。
「うん……だね」

 今って、都築に肩を抱かれて……るんだよね。

 頭がぼうっとしていて、夢の中みたいに現実感が希薄だ。
 こんなことしてて、いいのかな。彼女持ちの男と。
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