初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 でも、冷え切った身体には寄り添う都築の体温があまりにも心地良すぎて、わたしはそのまま動けない。

「ほれ」

 都築はリュックからミネラルウォーターを出した。
 
 口をつけ、むせないように気をつけながら、ゴクッと一口飲み込む。
 酔った体内を冷えた水がすーっと滑っていく。

 美味しかった。

 見上げると、覆っていた雲が流れ、月が煌々と地上を照らしだし……

 なに、このロマンチックなシチュエーション……
 もしかして、これ、夢?
 願望が作り出した幻?

 でも……
 この感触、どう考えてもリアルだ。
 
 何を思ったか、都築は肩に回していた手をわたしの頬まで伸ばし、自分のほうに向かせた。

 彼の手は氷のように冷たかったけれど、触れられたところは、一瞬で熱を帯びた気がした。

「冷たいよ……手」
 
 弱々しい抗議の声を無視して、都築はそのままわたしを見つめてくる。
 
 ん? 目の焦点が微妙にあっていない気がする。

 なんだ、酔ってるのか。

 そりゃそうだよね。じゃなきゃ、こんなことしないよね。絶対。
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