初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 都築にまったく相手にされなければ、単なるイタい片思いの思い出というだけで済んだのだ。

 でも、わたしは縛られつづけている。
 都築が残した戯れの言葉に。

――なあ、キスしていい?

 もし、あのとき、わたしが頷いていたら……
 キスしていたら……

 この想いは叶ってたのではないか。

 今思えば、酔った勢いだろうがなんだろうが、大したことじゃなかった。 

 どうして拒んでしまったのか。
 それがどうしても頭から離れない。

 かと言って、今さら、あのときのあれ、酔ってただけ? なんて聞けるはずもなく。

 そうこうしているうちに7年が経った。

 我ながら間抜けな話だ。

 いい加減、すっぱりと都築を思い切りたいというのも、偽らざる正直な想いだった。

 佐藤室長に告白されてから2週間。

 毎日、顔を合わせるたびに早く返事をしなければと焦る気持ちに苛まれる。

 彼は催促めいたことは一切しない。
 だから余計、申し訳なくて。

 でも、どう考えても、わたしはまだ都築に惹かれている。

 
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