初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
室長にはお断りしなければ。
こんな気持ちを抱えたまま付き合うなんて、彼に対して、失礼だ。
わたしはようやく、室長にメールを打った。
《今晩、お話がしたいです》と。
***
「うれしいよ、君のほうから誘ってくれて」
訪れたのは赤坂の裏通りにあるこじんまりした小料理屋。
彼の行きつけだそうだ。
「ここの料理はどれも美味しくてね。特に釜焚きのごはんが最高なんだ」
それぞれの席に季節の花が慎ましく生けてあるような、細部にまで心配りがなされた、感じのいい店だった。
「素敵なお店ですね」
「和食は好き?」
「はい、とっても。最近、脂っこい料理よりあっさりしたほうが良くなってきて」
室長は微笑んだ。
「まだ、そんな年じゃないだろう」
「でも来年27ですから」
「そんなこと言われると、来年35の僕が困るんだけど」
日本酒で乾杯をして、お通しの〝鯛の梅昆布和え〟に箸をつける。
ん!
「美味しい」
「気に入ってもらえてよかった」
室長は目を細めてわたしを見つめてくる。
慈しみのこもった眼差しで。
こんな気持ちを抱えたまま付き合うなんて、彼に対して、失礼だ。
わたしはようやく、室長にメールを打った。
《今晩、お話がしたいです》と。
***
「うれしいよ、君のほうから誘ってくれて」
訪れたのは赤坂の裏通りにあるこじんまりした小料理屋。
彼の行きつけだそうだ。
「ここの料理はどれも美味しくてね。特に釜焚きのごはんが最高なんだ」
それぞれの席に季節の花が慎ましく生けてあるような、細部にまで心配りがなされた、感じのいい店だった。
「素敵なお店ですね」
「和食は好き?」
「はい、とっても。最近、脂っこい料理よりあっさりしたほうが良くなってきて」
室長は微笑んだ。
「まだ、そんな年じゃないだろう」
「でも来年27ですから」
「そんなこと言われると、来年35の僕が困るんだけど」
日本酒で乾杯をして、お通しの〝鯛の梅昆布和え〟に箸をつける。
ん!
「美味しい」
「気に入ってもらえてよかった」
室長は目を細めてわたしを見つめてくる。
慈しみのこもった眼差しで。