初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「君がどうしても都築の幻に殉じたいというなら、無理にとは言わないけど。とりあえず付き合ってみるっていうのはどう?」

 わたしの視線と彼の視線が交わり、しばらくそのまま見つめ合っていた。

 そして気づいた。
 ああ、そうか。今日、メールを出した時点で、……どこかで期待していたんだ、わたしは。

 自分ひとりでは断ち切れない都築への思いに、室長が引導を渡してくれるのではないかと。

 ずるい話だ。
 自分に好意を寄せてくれた人を、ある意味、利用するのだから。
 本当にそれでいいんだろうか。室長は。

「いいんですか? それでも」

 彼は頷く。
「ああ、君が僕のことを嫌っているなら話は別だけど」

「嫌いなんて……そんなはずありません」
「じゃあ、問題なしだ」
 そう言って微笑む彼を見て、思った。

 この人なら、わたしのなかに根を張る都築への想いを枯らしてくれるかもしれない。

 都築より好きになれるかもしれない。

 次の瞬間、思わず頭を下げた。
「室長がそれで良ければ……どうかよろしくお願いします」
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