初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 彼の唇は少し遠慮がちに、わたしの唇に触れた。

 その感触に教えられた。
 本当に、この人と付き合うことになったんだと。

 でも、これが正解だと思う。
 わかってはいたのだ。

 都築を想うことは、海で落としてしまったピアスを探し出そうとするほど、無駄なことだと。

 でも、わたしひとりでは、どうしても掛け違えたボタンを外すことができなかった。

 だから、彼に、千隼さんに掛けなおしてもらうしかない。
 それがとても身勝手な考えだとわかってはいたけれど。

 それからわたしたちは日を置かずに、デートを3度重ねた。
 
 そして、その3度目の夜。

 わたしははじめて千隼さんの部屋で共に過ごした。
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