初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「ああ。昨日、東都から連絡が来て、今年のコンペの審査員、打診されたんだよ。そしたら電話をくれた事務の人、卒業生で俺たちの1年後輩でさ。ぜひ久保さんもご一緒にって」
「24日か……」

 クリスマス・イブ。
 まだ、予定は立てていなかったけど、開けとくべきだろうな。

「うーん、イブだし、ちょっと保留にしといて」

 都築はニヤッとして言った。
「何、カッコつけてんだよ。どうせ予定なんかないだろ?」

「なんで決めつけんのよ。そんなことないし」

 都築はわたしと千隼さんが付き合っていることをまだ知らない。

 彼だけでなく、会社ではまだ知っている人はいない。

 言わないでおこうと、わたしが頼んだ。
 千隼さんファンに何を言われるかわからないからと。

 そのとき、千隼さんは一瞬、寂しそうな目を見せたけれど「わかったよ」と、それ以上、何も言わなかった。
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