初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 服だけでなく、片目が隠れるほど長い前髪の、紫のカツラを被され、メイクもされて、トイレの鏡に映った姿はまさにコスプレーヤー。

「うわー、朱利先輩、最高。惚れちゃいます」
「いや、遠慮しとく」

 そう言う麻央は、ディズニー映画のマレフィセント風。
 これは自前だそうだ。
 こんな衣装、他にどこに着ていくんだか。

「キャーっ、佐藤室長、素敵すぎます!」
 入り口のほうで歓声が上がる。

 うわ。千隼さん、ドラキュラだ。
 マント姿があまりにも様になっていて、思わずのけぞった。

 彼はわたしたちの姿を認め、こちらにやってきた。

「気恥ずかしいもんだな。仮装というのも」
「いえ、すごく似合ってます」
「そうかな。そういう久保もなかなか」

 ふたりで話していると、麻央が横やりを入れてきた。

「そうやっておふたりが並んでると、倒錯味が強すぎてツラいっす。先輩、執事というよりドラキュラ伯爵が可愛がっている、ご寵愛の従僕みたいで」

「可愛がるって、こんな感じで?」
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