初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「なんか飲みますか? 取ってきますよ」
 わたしはみんなに声をかけた。

 すると「あっ、わたしも行きます」と麻央もめずらしく気をきかせた。


 ショールームの片隅には、会社にはおよそ不釣り合いなアンティークのバー・カウンターが設置されている。
 社長の趣味だそうだ。

 家に置こうとしたら、あまりにも存在感がありすぎて、奥様から却下されたらしい。

「ビール4杯、お願いします」
 で、バーテンの仮装をした社長手ずから、ビールを注いでくれる。

「かしこまりました、なんてね」
 ご満悦な様子だ。

「いやー、アパレル会社立ち上げる前はバーテンになりたかったんだよね。トム・クルーズの『カクテル』観てさ」

 両手にグラスを持って、千隼さんと都築のところに戻りかけると、ふたりは壁に寄りかかり、腕を組んで、なにやら深刻な顔で話し込んでいた。

 吸血鬼と海賊には、まったく似つかわしくないシリアスな雰囲気で。

 千隼さんがわたしたちに気づき、ふたりは話を中断した。

「お待たせしました」
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