初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 グランプリが発表されると、割れんばかりの歓声が沸きあがった。

 都築の講評を、真剣な眼差しで聴き入る学生たち。
 
 そういえば、あのときわたしも、先輩デザイナーたちがとても眩しかった。

 今、自分が審査員側に立っていることが不思議だった。
 あれが7年も前のことだなんて、信じられない。


 他の審査員や学校のスタッフへの挨拶を済ませ、事務室を後にして表に出ると、日はすっかり落ち、正門前のツリーのイルミネーションが点灯されていた。

「装飾の仕方まで、あのころと変わんねーんだな」
 都築はツリーの前で立ち止まり、しばらくその点滅する金色の光に見入っていた。

 冷たい風が吹きつけ、わたしはコートの襟を立てた。

 都築はわたしを見て、言った。

「これからなんか予定あんの?」
「うん、ある。8時に表参道で待ち合わせ」

 都築は時計に目をやった。
「じゃあまだ時間あるな。ちょっとだけ付き合えや」

 そう言って、門とは逆の方にすたすたと歩いていってしまう。
「ちょっと待ってよ」

 もう、相変わらず勝手なんだから。
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