初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「本気で、お前とキスしたいって思ったってこと。お前が受け入れてくれたら、俺、ユキと別れるつもりだったんだ。もう、自分の気持ちをごまかしきれなくなっていたから」

 都築は大きく息を吐いた。

 そんなこと、ありえない。

 一番に頭に浮かんできたのはその言葉だった。

 都築がそんなこと言うなんて。
 絶対にありえないと。

 9年の片思いが成就した瞬間なのに。
 なぜか喜びよりも戸惑いが勝っていた。

 でも、それなら、どうして?

「でも……」
 訊かずにいられなかった。

「どうして結婚したの。ユキちゃんと」

 都築は少し言いづらそうに口を開いた。

「ユキが……妊娠してるのがわわかったんだ。コンペのすぐ後で」
「妊娠? でも……」

 都築とユキちゃんのあいだに子供はいない。

「ああ、そんで入籍を決めてすぐ……4カ月に入ったころだったけど。子供、だめになっちゃってさ」

 わたしは思わず、手で口を押えた。
「そんな……知らなかった……」
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